石炭の液化プロセスにおける抽出残渣の利用法
中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,16-17
水素加圧下で得られる分解抽出物は、水素化分解原料として適するものであることから、必然的に液化プロセスが設定できる。
このような、石炭液化プロセスにおける石炭分解抽出残渣の用途として次のものが考えられる。
イ.無煙燃料としての利用
分解抽出残渣は揮発性分が減少し、かつ表面積が増大しているため、燃焼性のよい家庭用無煙燃料として利用可能である。
1960年初期に溶剤処理法による暖房炭の無煙化が計られた経過もある。
成型等の後処理が必要である。
ロ.活性炭への転化
水蒸気賦活によって分解抽出残渣を細孔構造の発達した活性炭に転化できることが明らかである。
しかし、これには灰分がさらに濃縮されるため、用途によっては脱灰処理が必要となろう。
水素化分解などの触媒担体としての利用も可能であろう。
ハ.水性ガスへの転化
水蒸気と抽出残渣との反応では、タール分の生成もほとんどなく、効率的に水性ガスへ転化できることがわかった。
水素、一酸化炭素は、還元ガスとして有効に利用できるし、フィッシャー反応を経て油へ転化することも可能であろう。
ニ.ガス、タール分の回収
石炭構成分子中の水素に富む部分を可能な限り回収することを主眼にすれば、石炭中の溶解容易な部分は溶剤を用いて回収し、溶解困難な部分は熱分解によって回収する組合せ法も考えられる。
また、残渣中の水素に富む部分は熱分解で回収でき、溶剤抽出と熱分解の組合せによって、石炭の80〜90%をガス、タール、石炭瀝青質として容易に回収できることがわかった。