石炭液化触媒ー天然パイライトー
中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,12-13
鉄-硫黄系の石炭液化触媒の中で、パイライトの活性が非常に高いことを認め、また反応機構の解析からパイライトを用いた場合には、脱酸素反応が顕著であり、一次液化生成物の軽質化も同時に促進していることも明らかとなった。
しかしこれらの研究で用いたのは合成パイライトであり、価格面からも実用化の面で問題となる可能性がある。
このためここでは、我が国に多量に賦存する天然パイライトを石炭液化反応用触媒として利用する目的で検討を行った。
この結果を要約すると、次のようになる。
(1) 各種鉄-硫黄混合系触媒、予備硫化触媒などの硫化鉄の形態はピロータイトであるか反応中にピロータイトになるか、いずれかであるが、その触媒活性は比較的類似している。
(2) しかし,パイライトのみはピロータイトへ変化する際に著しい触媒活性を示す。
(3) 天然パイライトは100mesh程度では他の鉄-硫黄系と同程度の活性ではあるが、2.0μm程度迄微粉砕すると石炭液化反応活性が著しく増大する。
(4) 天然パイライトの活性は、石炭の分解のみならずアスファルト質の軽質化反応も促進し、アスファルト質が減少しオイル収率が増大する。
(5) 天然パイライトのS/Fe比の大きいものほど油の収率が高いが、レジン分の収率など油の改質能はパイライトのS/Fe比と相関していない。
(6) 用いた天然パイライト中では、白老産が反応率、油収率、油の性状がいずれも良い値を示した。