ゼオライトの製造方法

問合わせ ひとつ戻る DB入口へ トップページへ PDF(イメージ)を見る

中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,8-9

 最近、各洗剤メーカーにおいては合成洗剤に含まれるリンが河川や湖の高栄養化の一原因物質であることが明らかになるにつれて洗剤の無リン化が思考されるようになった。 それはトリポリリン酸ナトリウム(Na5P3O10)に代替するビルダーとしてA型ゼオライトを使用しようとすることである。
 これらの合成ゼオライトはけい酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムといった試薬から合成されているが、それではコストが割高になるのは避けられない。 これに対して天然鉱物を出発原料とした場合には原価が非常に安い。 このことから酸性白土、カオリン、真珠岩、長石などからゼオライトを合成する方法が検討され、我が国では水沢化学株式会社が酸性白土を原料とするビルダー用A型ゼオライトの企業化に成功しているが、当所ではカオリンを用い、それを焼成し非晶質にして反応性を高め、水酸化ナトリウムを加え、水熱合成法で製造する方法について検討した。
 天然鉱物からのゼオライト製法としては、a)カオリン鉱物を焼成し、メタカオリンにして反応性を高めてから水酸化ナトリウムを加える。 b)カオリン、火山ガラスを摩砕し、結晶構造を壊してから水酸ナトリウムを加える。 の方法を採用した。
 なお、カオリンだけではシリカ分が少ないので、その分をコロイダルシリカで補った。
 カオリンを700℃に焼成すると無定形化し、反応性に富むようになる。 しかし、高過ぎる焼成温度はP型を生成するようになる。 最適処理温度は650〜850℃であった。 合成最適条件は試薬を出発原料とした場合とほぼ同じで、Na2O/SiO2 = 0.5〜0.7、SiO2/Al2O3 = 5〜10、H2O/Na2O = 40.0の範囲であった。 これにより生成したホージャサイト型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は3.5以上であった。 また、Na2O濃度が高くなるとP型ゼオライトの生成量が多くなる傾向があった。
 次に、火山ガラスを出発原料としてホージャサイト型ゼオライトを合成した。 無定形化するために長時間原料を摩砕した。
 この場合もホージャサイト型が生成したが、ゼオライトのSiO2/Al2O3の比の低いX型の生成が主であった。
 ゼオライトの使用目的を合成洗剤用ビルダー材に求めた場合、A型ゼオライトにする必要がある。 カオリンからの合成はX、Y型の合成より容易であった。 すなわち、焼成カオリンと水酸化ナトリウムのみからA型ゼオライトを合成することができ、比較的低温(50〜100℃)結晶化でき、しかも熟成時間は短くてよかった。 また、合成物のX線回析分析からは生成物は市販品A型と同品位(95%以上)であることを認めた。
 合成物のカルシウム交換能は市販品と比較し、同等かそれ以上であることが知られた。