閉回路選鉱法
中小企業団「先端工業技術応用要覧」(s59〜60年度)抜刷
1989年3月 北海道工業開発試験所技術資料 12,6-7
鉱山における選鉱、選炭工場から排出される用廃水を循環使用する利点は廃水量が少なくなるので、総量規制に対する解決策となり得るとともに、循環水は繰り返される系の性能を低下させない程度に水質を改善すればよいのであって、廃水規制値にとらわれることはない、少なくとも廃水処理にかかる負担を軽減することができる。
さらには用水の確保の難しい地域での鉱山開発で必須なことである。
また冬期間、水温の高い水を循環することができ、構外に設けた装置の凍結などによるトラブル、浮選系などへの好成績が期待できる、などのことが考えられる。
今後さらに他の選鉱・選炭工場においても採用されるものと考えられる。
本研究でいう閉回路系選鉱法とは前述のように用水に対して閉じられた系統であって、用廃水の循環使用による選鉱法をさす。
これの理想は放流水量が零であり、付着水、蒸発水のみが系外に出る系統である。
これに対して従来は用水を使い捨てる開回路系である。
クローズ化によって生ずる問題は多く、またそれは対象とする鉱種と処理方法によって多種多様であるので十分に研究され、体系化される必要がある。
また、現状において用水をクローズド化することは、起こり得る問題に対する対策が具体的に把握されていない以上、実行することはできないことである。
この場合に共通する問題は、1)蓄積成分がプロセスの性能を低下させる恐れがある、2)プロセス内の流量バランスの確保など、系全体として最も効率よく安全な操業条件の解明が必要である、3)新たに生産系とのかかわりにおいて循環水処理を考える必要がある。
このような未知の効果とかシステム工学的な問題についての検討は連続的な処理のできる実験系によって長時間の連続実験で確かめることが必要である。
また、このような問題解決に関する研究は少なく、用廃水をクローズド化するための検討する手立てと、見通しを得る観点からその意義は極めて大きいと考える。
以上のことから本研究は北海道南白老に産するカオリン鉱を実験例とし、その中に随伴する硫化鉄、石英などを除き製紙用カオリンを回収する閉回路系の実験プラントを作製し、廃水を循環使用した。
そしてこのことによって生ずる問題の究明と、カオリン鉱閉回路系選鉱法の可能性について検討を行なった。