酸化物高温超伝導体の合成

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佐藤享司
1988年11月 北海道通産情報 43(11),38-39

 1987年2月ヒューストン大学のChuらによってY-Ba-Cu-O系の酸化物が90K以上の臨界温度を示すことが報告され,その化学式がYBa2Cu3O7-Xであることが明らかにされた。 この内のイットリウムYはレア・アースと呼ばれるグループの元素でこのYを他のレア・アース元素で置き換えた類似の構造の物質が次々と名乗りをあげていたが,結局,イットリウム系酸化物以上の物質は見出されなかった。 1988年2月,科学技術庁金属材料技術研究所の前田グループによって105KのToを示すBi-Sr-Ca-Cu-O系の酸化物が発見され,同時期に米国アーカンソー大学のA.M.Hermanらによって125KのToを示すTl-Sr-Ca-Cu-O系の酸化物が見出された。
 このように,酸化物高温超伝導体の臨界温度は確実に上昇してきているが,安定で再現性のある室温(300K)超伝導体発見までにはなお数十年の歳月を要するかも知れない。
 当所でも昨年よりYBa2Cu3O7-X高温超伝導体の研究を開始したので,その一端をここに紹介する。