松前産滑石の開発利用技術に関する研究
-炭化ケイ素,窒化ケイ素の合成-
下川勝義/ 関口逸馬
1988年3月 北海道工業開発試験所報告 45,70-80
炭化ケイ素(SiC),窒化ケイ素(Si3N4)は硬度,熱伝導率,耐熱性,耐熱衝撃性および化学的安定性などに対して優れた性質を有しており,そのことを利用して耐火物原料,各種耐摩耗ライニング材,エンジン用材料,半導体素子,高温用発熱体材料,燃料電池のマトリックス材など多方面で利用あるいは研究がなされている。
また,これらセラミックスの製造法は,原料の反応性,生成物の性状および経済性など,目的とする製品の用途に応じて種々の方法が開発されており,近年はその製造法としてPVD法,プラズマ法などによって高純度で極微粒子などの研究が行われている。
従ってこれらの製造には高純度な原料を出発源としているのが常である。
しかしながら一方では低品位であっても,得られる粉体の性状は上述の特長を有していることから,その品質に応じた利用の仕方もあるので,その方面の研究もまた必要である。
これまでに,原鉱として低品位ではあるが,量的に多く見込まれる松前産滑石の高度利用を図る研究を行っているが,本章ではこの滑石を原料にして,Sic,Si3N4などのセラミックス合成について,特に反応温度,反応時間の影響などの最適合成条件の要因について検討したのでその結果をまとめた。