松前産滑石の開発利用技術に関する研究
-ステアタイト磁器に関する研究-
下川勝義/ 関口逸馬/ 佐山惣吾
1988年3月 北海道工業開発試験所報告 45,63-69
現在,我が国において年間数十万トン以上消費されている滑石の多くは,中国,オーストラリア,アメリカなどに依存している。
また,それは高純度のものが求められており,ステアタイトとして,あるいは,粉体の滑石として輸入されている。
筆者らは,これまで,低品位滑石の付加価値を高め,利用するための一方策として,ステアタイト磁器の合成について研究を行って来た。
ステアタイト磁器は,MgO・SiO2の組成から成り,一般に白色又は淡褐色の光沢を持つセラミックスで,3種の多形がある。
その中でも重要なものは,電気的特性の良い1000℃以上で合成される高温型のプロトエンスタタイト(斜方晶系)である。
これは,高周波損失が小さく,機械的強度も大きい。
また,耐熱衝撃性に優れ,高温絶縁抵抗が大きく,さらに,寸法精度が高いなどの特長を有している。
このことから,硝子,電子銃,自動車エンジンの電気絶縁端子類,及び電子工業関係など,幅広い分野で利用され,また,価格の面で安価であることからも多岐に利用されている。
以上の事から,国内資源の有効利用と低品位資源の高度利用の観点から,松前産滑石からステアタイト磁器を合成する実験を行った。
その結果,滑石原鉱中に炭酸塩を始め,数%程度の鉄分が酸化鉄あるいは固溶体として,含有していることから,これらがステアタイト磁器の電気的特性などに大きく影響を与えた。
すなわち原鉱から合成されたステアタイト磁器の電気的特性は,市販品より劣る結果が得られた。
このことから,この原鉱から出来るだけ不純物を除去する目的で,高勾配磁気分離機などによって,鉄分や炭酸塩を除去した。
それを原料にしてステアタイト磁器の合成を行った。
そして得られた合成品の電気的特性の測定試験を行った。