新しい反応技術メタセシス反応
平間康子
1987年6月 北海道通産情報 42(6)42-43
有機化合物は炭素原子が連なって骨格ができています。
この炭素の鎖に2重結合が1つ以上あるものをオレフィンといいます。
エチレンやプロピレンは最も簡単なオレフィンです。
これから述べるオレフィンのメタセシス反応はこの2重結合の関与する反応です。
メタセシスとはギリシャ語で「位置を交換する」という意味で,1対の2重結合の間で炭素原子の交換が起こることを指しています。
2重結合は1重結合に加えて炭素間の結合がもう1つできるので1重結合より強固な結合ですが,2番目の結合は切れていろいろな物と反応し易いので2重結合を持った化合物は化学合成の原料として非常に重要です。
メタセシス反応を用いて2重結合の組み換えを行うと2重結合を持ったいろいろな炭素骨格の物質の合成が可能となるため,メタセシス反応は極めて有用な反応と考えられており,1964年,フィリップス石油のバンクスらによりプロピレンからエチレンとブテンができる触媒反応が初めて見い出されて以来,多くの化学者が理論,応用両面からこの反応を研究してきました。