熱量天秤(TG-CSC)による高分子の熱測定
斎藤喜代志
1987年7月 北開試ニュース 20(3),1-9
この熱量天秤は,当所と真空理工(株)とで共同開発したもので,伝導型熱量計と熱重量測定計を組み合わせ,試料を外部のみから赤外線加熱炉を用いて加熱し,比熱,潜熱及び熱重量変化を同時に測定できる熱分析装置である。
すでに,本装置を用いて常温から860℃までのシリカ(Si02),アルミナ(α-Al2O3)の比熱や硝酸カリウム(KNO3),亜鉛(Zn)などの転移,融解熱量を測定した。
また脱水反応によって重量変化が伴う硫酸マグネシウム・7水塩(MgSO4・7H2O)の熱測定では,脱水の各段階が明確に分離され,それぞれの脱水熱量と熱重量変化が測定できることを報告した。
本装置を従来の熱分析装置と比較すると次のような特長を持っている。
1) 機器の操作が簡単である。
2) 測定時間が早い
3) 再現性がよい。
4) 汚染に強い。
5) 試料量が少なくてすむ。
6) 昇温速度による影響を受けない。
7) 脱水によって熱重量変化を伴う場合の熱量を精度よく測定できる。
本報告では,熱可塑性高分子の中から用途が広く,使用量も多い高密度ポリエチレン(HDPE),高圧法ポリエチレン(LDPE)及びポリプロピレン(PP)について測定した結果について述べる。