含油スラッジ廃棄物の資源化および無公害処理技術に関する研究
-第3章 熱分解装置の基礎研究-

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三浦正勝/ 出口明/ 武内洋/ 細田英雄/ 鈴木智/ 平間利昌
1987年10月 北海道工業開発試験所報告 43,9-16

 廃油類や含油スラッジからの油分回収法として,これまでにn-ヘキサンなどを溶剤に用いる溶剤抽出法,温湯抽出法,水蒸気熱分解法,回収油抽出法などが検討されている。 これらの方法の中で溶剤抽出法と水蒸気熱分解法はコストが高く,一方,温湯および回収油による抽出法だけでは重質な油分を軽質化して回収することができない。 また,単に加熱して蒸発留分を回収する蒸留法や接触法によって重質な油スラッジを改質しながら回収する方法も考えられるが,蒸留法では含油スラッジに洗浄水が混入していることから,事前に水分を除いて突沸事故を防ぐ必要がある。 一方,接触法では,鉄錆,砂泥,硫黄など触媒の被毒成分が多い含油スラッジ廃棄物には適用できない。
 そこで,本研究においては,含油スラッジからの油分回収プロセスを考えるにあたって,
 (1)前章の結果から,熱分解法で回収油が改質されるが,コストが非常に高くなる。
 (2)含油スラッジの性状が均一でなく,しかも無機分等を含んでいることなどを考えると,複雑な操作を行ったり高いランニングコストを要するプロセスを選択するのは得策でない。
 (3)加熱処理をする場合,含油スラッジは熱伝導性が悪いので,温度の均一化や制御がしやすい操作法を選択すべきである。
などの点を考慮して検討した結果,流動層を用いた部分燃焼が他の熱分解油分回収方式がもっとも適しているものと判断した。 この方式であれば,熱分解に要する熱を一部分のスラッジの燃焼熱で補えるので系外から熱を供給する必要はなく,しかも流動層を用いれば,温度の均一化と制御が容易になり,流動化粒子の選定によっては油分の改質が期待できるなどの利点が考えられる。 以下では,1. 有機系廃棄物の流動熱分解実験に使用した既有の装置により,含油スラッジの部号燃焼による流動熱分解・油分回収法の可能性と操作性について予備的に検討した結果,2. 1の結果をもとにして設計・製作したベンチスケールの専用装置による実験結果,について述べる。