含油スラッジ廃棄物の資源化および無公害処理技術に関する研究
-第1章 研究の目的と経過の概要-
出口明/ 三浦正勝/ 細田英雄/ 平間利昌/ 武内洋/ 鈴木智
1987年10月 北海道工業開発試験所報告 43,1-2
石油の安定な供給を維持するために石油備蓄政策が進められ,昭和61年12月現在の備蓄量は民間備蓄が5,400万kl(102日分相当),国家備蓄が2,200万kl(40日分相当)に達している。
63年度末までには国家備蓄が3,000万klに増強される計画である。
備蓄タンク類は消防法によって定期的な開放点検が義務づけられ,容量1万kl以上の大型タンクでは5年間に一度実施することが定められている。
この開放点検時にタンク底から,鉄錆や砂泥を含んだワックス状のスラッジ,すなわち含油スラッジが多量に排出される。
備蓄量の増加だけでなく,原油の重質化傾向も含油スラッジの排出量を増加させる要因の一つになっており,ある例ではタンク容量の数パーセントに達したとの報告もある。
さらに,原油タンカーや精油所,火力発電所等のタンクからも含油スラッジが排出される。
本研究は,このようなタンク底やタンカーの含油スラッジから有用成分と熱エネルギーを回収する無公害型のプロセス・システムを開発することを目的としている。
すなわち,含油率が高いスラッジ(一部ではウエットスラッジと呼ぶこともある)からは熱分解によって油分を回収し,一方,含油率の低い劣質のスラッジ(ドライスラッジと呼ぶこともある)と熱分解残渣からは流動層を用いた無公害燃焼法によって熱エネルギーを回収する。
この回収熱を熱分解用あるいは備蓄基地用等の熱源として利用する。
このような熱分解・油分回収プロセスと,無公害燃焼・熱回収プロセスを組み合わせた総合的な含油スラッジ処理システムを確立することが最終目標である。