砂媒体流動層によるガラスバルーンの製造技術

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本間専治
1987年3月 北海道工業開発試験所報告 42,7-16

 火山の多い我が国では火山灰の賦存量も多く,特に九州南部のシラス台地をはじめ東北,北海道地域にも多く存在し,それらの有効な利用が望まれている。 北海道では樽前,ニセコ,十勝,阿寒などの地域に大量の火山灰が堆積している。 それらのなかには良質のガラス質や真珠岩を多く含むものが見いだされている。
 火山灰を急速に加熱すると,そのなかのガラス質あるいは真珠岩の微粒子から微細な中空のガラス球が得られる。 木村らは,このことを利用して火山灰から微細なバルーンを製造する方法を見いだした。 この製品はアルミニウム,プラスチックなどの軽量化,あるいは断熱性に優れた建築材料として使用するなど,種々の用途開発が行なわれている。
 従来のガラスバルーンの製造法としては,外熱型のロータリーキルン,電気炉あるいは熱風炉などを使って900〜1000℃で焼成する方法が試みられてきたが,装置内で火山灰の融着が起きること,焼成温度や焼成時間の変動により製品のバラツキが生ずること,焼成コストが高いなどの難点があった。
 著者らは,上述のような従来法の問題点を解決するために,次のような特徴を持つ製造法を考案した。
1)砂を流動媒体とする流動焼成法である。
2)原料は流動化ガスに同伴させて流動層底部のガス分散板を通して供給する。
3)焼成に必要な熱量の供給は,流動化ガスである空気に燃料ガスを混合して流動層に吹き込み,流動層内で燃焼する内熱方式によって行なう。
 従来法に比べて,この方法は装置の構成が簡単で,熱効率が高く,炉内の温度を均一に保持できるなどの特長を有し,焼成コストの低減や製品の均質化が期待できる。
 本報告では,このような砂を媒体とした流動層を利用して火山灰からガラスバルーンを製造する方法を開発するために行った基礎実験及び工業化試験の結果について述べる。