松前産滑石を用いたステアタイト磁器の製造と評価

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下川勝義/ 関口逸馬
1987年1月 北海道工業開発試験所報告 41,25-33

 滑石(Talc)は,粒度,色,形,化学組成などの品質に応じて製紙用,紡織用,塗料,農薬そして顔料などのほか,陶磁器の釉薬,ステアタイト磁器,化粧品,プラスチック及びゴム工業用添加物として巾広く利用されている。 これらに使用される滑石の多くは中国を初め,オーストラリア,アメリカなどに依存しており,年間の輸入量は約60万トンにおよぶ。
 一方,北海道松前町江良地区には,古くから良質の滑石鉱床の存在が知られており,1950年以降活発に稼行され,我が国の滑石生産額の約20%を占めていた。 しかし高品位鉱床だけが採掘の対象になっていたために,現在では鉱床全体が低品位化するとともに資源の枯渇が問題となっている。 そして年間約1万トンの規模で採掘されているが,白度,品位などの点で,安定した生産量の確保が難しい状態にある。 このことから北海道開発庁は新たな鉱床の開発を行うための調査を行ない,その結果低品位ではあるが,数十万トン以上といわれる量的に多い滑石鉱床が発見された。
 そこで低品位滑石を有効利用するための新たな用途開発が望まれており,当所では開発庁と仕事を分担する形でこれを取り上げることにし,特別研究として昭和58年度から3ケ年の計画で松前産滑石の高度利用に関する研究を開始した。 その具体的な利用として,従来の製紙用材の他電気絶縁用ステアタイト磁器,そして新しい利用には高温耐熱構造材料である炭化けい素製造について研究を進めている。
 精製しない未処理の原鉱石から直接ステアタイト磁器の製造を示した。 そしてこの生成物の電気特性を測定し,高周波絶縁材として利用することについて評価した。
 これまで低品位滑石をステアタイト磁器化し,その性状を評価したうえで用途開発を検討した報告は少ない。 従って本報告では未利用低品位資源を利活用する一つの試みとして,有益と考える。