北海道工業開発試験所における最近のバイオマス利用に関する研究
-水産加工場廃棄物の処理と利用-

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池畑昭
1987年2月 北海道工業開発試験所技術資料 11,2,15-15

 本道は,年間漁獲量が100万トンを超えるわが国最大の水産基地であり,数千の水産加工場が港湾地帯に存在し,本道の主要産業を形成している。 しかしながら,これらの工場から排出される排水,廃棄物の処理は依然として大きな問題となっている。 本研究はこれらに対処するため昭和57年度より5ヶ年計画で開始された産,官共同研究で次の研究要素から成り立っている。
1. 小規模工場用簡易排水処理装置の開発
 水産加工場の大半は1日当りの排水量が50m3未満の小規模工場で排水規制の対象外であるが排水の汚染度が高く環境に与える影響が大きいため,これらの工場に適した低コスト,操作簡便の排水処理装置の開発を目的とする。
2. 排水処理自動管理装置の開発
 1日当りの排水量が50m3以上の工場は排水処理を義務付けられており,主に活性汚泥処理が用いられているが,工場の操業が魚の取扱量によって変動するため排水の負荷変動が大きく排水管理に高度の技術を要し,各工場の悩みとなっている。 これに対処するため,曝気槽中の溶存酸素を検出し,それが絶えず設定値を維持するように曝気量を制御する方式による自動管理装置を開発した。
3. 固体発酵法によるミール工場煮汁の飼料化
 ミール工場から排出される煮汁は粗蛋白,粗脂肪に富むので,固体発酵法による蛋白飼料化について検討し,見通しを得た。 供試菌体にアスペルギルスタマリを用い,炭素源に魚油,固体担体にピートモスを用い,発酵温度30℃,水分含量50〜70%の条件で発酵し,蛋白含量40%以上の試作品を得た。
4. 余剰汚泥の低温メタン発酵
 水産加工場排水処理施設より排出する余剰汚泥をメタン化し,ローカルエネルギーとして利用する一方,発酵残渣を肥料化するため寒冷地向きの低温メタン発酵法(発酵温度20〜25℃,従来法は37〜50℃)について検討し,合目的の低温メタン菌の採取に成功した。 現在,これを用いて余剰汚泥のメタン化の連続試験を行っている。