オゾンによる核酸の分解に関する研究
-第7章 オゾンによる大腸菌の殺菌と菌体内のプラスミドに及ぼすオゾンの影響-

問合わせ ひとつ戻る DB入口へ トップページへ PDF(イメージ)を見る

神力就子/ 石崎紘三/ 横田祐司/ 池畑昭
1986年3月 北海道工業開発試験所報告 40,57-62

 近年オゾンが上水や排水の殺菌剤として有用であることが認められ,また一方ではオゾンが大気汚染物質として極めて有害であることが判明したため,生物や有機物に対するオゾンの反応性が注目を集めてきている。 しかしながら分子レベルでのオゾンによる変化を研究したものは多くはなく,最近になって生体分子に対するオゾンの作用の基礎的な研究が深められようとしている。 細菌やウイルスに対するオゾンの最初の作用点は細胞膜あるいはカプシド,外被であるが,これらの構成成分である不飽和リピドやタンパク質のオゾン反応性がScottら,Muddら,Goldsteinらにより初めて報告された。 ウイルスの不活性化機構については第8章でふれるので,ここでは細菌のオゾンによる殺菌機構を概論するが,上記細胞膜への攻撃に加えて,オゾンは細胞膜を通過して内部へ浸透していく過程でその間に存在する酵素に損傷を与え,不活性化していくことも知られている。 さらに染色体DNAやRNAその他の細胞物質を損傷することが考えられる。 この中で染色体DNAの損傷は殺菌機構として重要な位置を占めると考えられる。 大腸菌のオゾンによる殺菌に関連してこの点について検討した報告があるが,これらは細胞内DNAの変化を間接的にしか検討し得なかった。 DNAの損傷,特に鎖切断がオゾンによって生じているかどうかをChaneyが末梢血管血液細胞について検討したが,DNAの鎖切断がオゾンによるものとの確認はできないで終っている。 著者らはオゾンによる核酸の分解機構をこれまで検討し,その集大成としてDNAが生体中で通常に存在している形態であるスーパーコイルDNAのオゾンによる分解様式を第6章において検討した。 すなわち,著者らが提唱したとおりグアニン,チミン残基がオゾンにより破壊され,その結果,鎖切断が起こることを確認した。 この反応は極めて迅速に生じるので現象的にはオゾンが直接に鎖切断を起こしているかのように見える。 すなわちオゾンにより閉環状プラスミド(ccDNA)が,1箇所の鎖切断により開環状プラスミド(ocDNA)になる現象は極めて鋭敏であるので,これを指標として大腸菌をオゾンで殺菌した時の内部のDNAのオゾンによる損傷の程度を計ることができると考えた。 さらにこのことが究極的には大腸薗のオゾンによる殺菌機構の解明につながると考え,以下の検討を行った。