オゾンによる核酸の分解に関する研究
-第6章 オゾンによるプラスミドDNAの分解様式-

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神力就子/ 石崎紘三/ 横田祐司/ 池畑昭
1986年3月 北海道工業開発試験所報告 40,43-56

 第5章においてオゾンにより仔ウシ胸腺DNAのグアニンおよびチミン残基が分解され,結果その水素結合が破壊され,ついにはヌクレアーゼS1が作用可能となるような二重らせん構造の緩んだDNAになること,しかも数個の塩基の分解が確認される時でもDNAのヌクレオチド鎖の切断は生じていないことを報告した。 一方,細胞内のDNAは通常,Watson-Crickの二重らせんモデル(相補性の塩基配列を持つ二本の鎖が,直線状の軸のまわりに二重らせんを描く構造)とは異なり,ヒストン等のタンパク質との相互作用やトポイソメラーゼの作用により,らせん軸は直線状ではなく曲線となって,さらに高次のらせん構造を形成していることが明らかになってきた。 このような構造はスーパーコイル構造と呼ばれ,高次構造上特定領域の構造が変化し易いため,DNAの複製,組換え,転写の調節に重要な役割を果たしていると考えられる。 したがってオゾンの核酸への影響を論ずるには,このスーパーコイルDNAへのオゾン反応性を検討することが必須と考えられる。
 著者らはこのスーパーコイルDNAの典型例としてプラスミドDNAを取り上げた。 プラスミドDNAには,環状二本鎖DNAがスーパーコイルを形成している閉環状DNA(ccDNA)とスーパーコイル構造が解消されている開環状(ocDNA)の2種類の形態がある。 ccDNAのDNA鎖の一個所にでも切断が生じると即座にスーパーコイル構造が解消されてocDNAに変化する。 この2種の形態はゲル電気泳動上で移動度が異なり,完全に分離した2本のバンドとして観察されることから,オゾン分解反応におけるプラスミドDNAの形態変化を容易に観察できると考えた。 そこで遺伝子組換え技術のベクターとして開発された人工プラスミドの1つであるpBR322を用いてオゾンの影響を検討した。