オゾンによる核酸の分解に関する研究
-第5章 仔ウシ胸腺DNA二重らせん構造のオゾン処理による不安定化-

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神力就子/ 石崎紘三/ 横田祐司/ 池畑昭
1986年3月 北海道工業開発試験所報告 40,38-42

 DNAはデオキシリボヌクレオチドがホスホジエステル結合でつながった鎖状高分子である。 DNAは通常二重らせん構造をもっており,その2本鎖がアデニン(A)に対してはチミン(T),グアニン(G)に対してはシトシン(C)という特異的塩基対によって結びつけられている。 さらに,生体細胞やウィルスのDNAは二重らせん全体がさらによじれた超らせん構造(スーパーコイル)を形成している。 したがって,DNAは通常1本鎖であるRNAとは異なった三次構造をもっているといえる。 また,第4章でも述べたように,その化学的性質もRNAとは異なる場合が多い。 DNAのオゾン分解に関するこれまでの研究については,第1,2章および4章の緒言で言及したが,その多くはオゾンによりDNA鎖の切断が生ずることを報告している。 しかし,前章までに述べた著者らの研究結果は,DNAにおいても鎖切断に先立ってグアニンまたはチミン残基の破壊が起こることを示唆している。
 本章においては仔ウシ胸腺DNAを用いてDNAに対するオゾンの作用を検討した。 すなわち,RNAの場合と同様にDNA鎖上の4つのヌクレオチドの分解速度を比較し,また鎖切断の有無を検討した。 さらに,酵素による加水分解速度と二重らせん融解温度の変化を調べ,DNA二重らせん構造に及ぼすオゾンの影響を検討した。