オゾンによる核酸の分解に関する研究
-第4章 デオキシリボヌクレオチドのオゾン反応速度とその反応様式-

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神力就子/ 石崎紘三/ 横田祐司/ 池畑昭
1986年3月 北海道工業開発試験所報告 40,31-37

 本章の目的の第一番はデオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドではオゾン反応性が異なるか否かを確かめることである。 具体的には,第1章で4種のリボヌクレオチドの分解過程を明らかにしたが,デオキシリボヌクレオチドも同様の過程で分解するか否かを検討した。
 目的の2番目はヌクレオチドに対するオゾンの作用機構をより明確にすることである。 Brinkmanらはヒト血液中のオキシヘモグロビンに対するオゾンの作用が紫外線やX線の作用と類似であることから,オゾンを放射線類似(radiomimetic)物質とみなした。 それ以来,生体物質に対するオゾンの反応が放射線と同じラジカル反応機構であると結論づける研究が多い。 核酸とオゾンの反応についてもすでに言及したように,ヌクレオチド鎖の切断が生ずることから放射線類似の反応機構とする考え方が強い。 しかし,前章までの著者らの研究結果はこれに対して否定的であり,グアニン残基に対するオゾンの直接反応(イオン反応)が支配的であると考えている。 本章ではこの点を更に詳しく検討した。
 第3番目の目的はデオキシリボヌクレオチドとオゾンの水溶液中における反応速度を知ることである。 これまでの研究ではガス吸収法によりオゾン処理し,ヌクレオチドの変化を測定した。 この方法では反応速度の大小関係は知ることはできるが,溶液中における反応速度の大きさを知ることはできない。 これは気相から溶液中へのオゾンの拡散速度の影響が大きいためである。 RNAとオゾンの反応においてそのグアニン残基と他の残基との分解速度の差は(第2章参照),第1章に示した各リボヌクレオチドの分解速度の差から考えられるよりもはるかに大きかった。 おそらく溶液中の反応速度の差が反映されているのであろう。 したがって,溶液内均一反応速度を知ることにより核酸とオゾンの反応をより定量的に把握できると考えられる。 以上の3点を主な目的として本研究を行った。