オゾンによる核酸の分解に関する研究
-第3章 オゾンによるマウスプロリンtRNAおよびマウスイソロイシンtRNAの分解様式-

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神力就子/ 石崎紘三/ 横田祐司/ 池畑昭
1986年3月 北海道工業開発試験所報告 40,20-30

 第2章においては3種類のRNAのオゾン分解反応を検討し,いずれの場合もグアニン残基が最も速く分解することが分った。 またRNA中の数個のグアニン残基のみが分解されているとみなされる時点で,酵母フェニルアラニンtRNA(tRNAPhe)のアミノ酸受容能やタバコモザイクウイルスRNAの感染能がほとんど失われていることを見い出した。 本章においては標記の2種類のtRNAのオゾン分解性を検討し,これによりtRNAのヌクレオチド鎖上におけるオゾンの作用点を明らかにすることを試みた。
 周知のごとく核酸は単純な形体の鎖状高分子ではなく,分子内水素結合によって複雑な高次構造を形成している。 またその高次構造が核酸の生化学的機能と深く関連している。 このことは一般に73〜93ヌクレオチドから成る小さな核酸であるtRNAにおいても同様である。 これまでに250種ものtRNAの一次構造(塩基配列)と二次構造が決定されているが,二次構造としてはすべてのtRNAがクローバーリーフ形構造をとっている。 さらに酵母tRNAPheの結晶について,X線解析によっていわゆるL字形の三次構造が明らかにされている。 他のいくつかのtRNAについてもX線解析が試みられており,解析はまだ不完全ながらも基本的には酵母tRNAPheと類似の三次構造をとると考えられている。 そこで著者らはマウス腎細胞から得たプロリンtRNA(tRNAPro)およびイソロイシンtRNA(tRNAIle)を用いて検討を行った。