オゾンによる核酸の分解に関する研究
-第2章 酵母RNA、酵母フェニルアラニンtRNAおよびタバコモザイクウイルスRNAのオゾン分解-
神力就子/ 石崎紘三/ 横田祐司/ 池畑昭
1986年3月 北海道工業開発試験所報告 40,13-19
第1章において核酸に対するオゾンの作用を解明する最初の段階としてRNA構成成分のオゾン分解性を検討し,グアニン塩基が最も速やかに分解することを見いだした。
またリボヌクレオチドの分解過程を明らかにした。
本章においてはまず4つのリボヌクレオチド混合系において各ヌクレオチドの分解速度を比較し,次いで標題にある3種類のRNAに対するオゾンの作用を検討した。
RNAはリボヌクレオチドが3’位および5’位でリン酸ジエステル結合によって重合した高分子である。
このような高分子においてもやはりグアニン残基が最も速く分解されるのか否かは興味のある点である。
鎖切断に関していえばDNA鎖は放射線照射によって切断が頻繁に起こることが知られており,オゾンによっても生ずることが報告されている。
すなわち,現象的に一致しているため,オゾンはradiomimeticガスといわれている由縁である。
しかし,第1章では糖の破壊は塩基の破壊より遅れ,糖-リン酸結合の切断はさらに遅れることを報告した。
RNAで果たして鎖切断が生じるであろうか。
この点については酵母RNAと酵母フェニルアラニン転移RNA(以後tRNAPheと略記)を用いて検討した。
またRNAはウイルスあるいは生体内において種々の生化学的機能を担っているが,オゾン分解と活性との関連をtRNAPheとタバコモザイクウイルスRNA(TMV-RNA)を用いて調べた。
以上に述べた3点,すなわち(1)RNAにおけるオゾンの主要な作用点,(2)ヌクレオチド鎖の切断の有無,(3)RNAのオゾン分解と不活性化との相関性,を明らかにすることが本章の主な目的である。