オゾンによる核酸の分解に関する研究
-第1章 リボ核酸構成成分のオゾン分解-

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神力就子/ 石崎紘三/ 横田祐司/ 池畑昭
1986年3月 北海道工業開発試験所報告 40,7-12

 オゾンの利用に関してはすでに序で述べたようにヨーロッパにおいて上水の殺菌剤として長い歴史を持っている。 一方アメリカや日本では塩素処理を行っているが,最近河川水などを上水源とした場合,トリハロメタンなどが生成し,その発癌性が問題となるためオゾンの使用が見直される機運にある。 これらを背景にオゾンによる殺菌の速度論的な研究は実用性の観点から多数行われてきた。 また大気汚染源としてオゾンの動植物組織や細胞へ与える影響に関する研究も多い。 さらにその突然変異原性に関する研究も多数に及んでいる。 これらの中には核酸あるいは核酸と関連づけた研究が報告されているが,いずれも核酸の変化をマクロ的に捉らえたものであり,したがって著者らは核酸とオゾンの反応性をよりミクロな分子レベルから解明していくことに研究の目標をおいた。 核酸構成成分のオゾン反応性を検討したものとしては古くはChristensenらがUV吸収の減少を報告し,PratらがオゾンとX線照射による核酸塩基の分解を比較検討した。 その後,Scott,大村らがオゾンによる核酸物質のUV吸収の変化,糖量の変化などを追跡しヌクレオシド,ヌクレオチドのオゾンによる分解に関する考察を一歩進めたが,しかしこれらの研究は予試験的な域をまぬがれず,また系統的なものとは言えなかった。 著者らは本章においてRNAを構成する塩基,リボヌクレオシドおよびリボヌクレオチドのオゾン反応性を詳細に検討することとした。