石炭液化油成分のFI相対イオン感度の測定

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吉田忠/ 前河涌典/ 島田敏章
1985年3月 北海道工業開発試験所報告 36,35-39

 石炭液化油の詳細な分析は,その化学的な有効利用や合理的な液化プロセスの開発にとって不可欠である。 しかし液化油は,主として芳香族や水素化芳香族化合物からなる多成分系混合物であり,その組成分析は極めて困難である。 従って,これまでの液化油分析は,その分子量分布や平均分子量の測定によって行われてきた。
 Beckeyによって開発された電界電離型(Field Ionization,FI)質量分析法は,炭化水素化合物に対してフラグメントイオンのない親イオンのみからなるスペクトルを与えることができ,それ故に液化油の分子量分布や平均分子量の測定のみならず組成分析にも有効であると考えられる。 前報で,著者らは液化油のFI/Field Desorption(FD)マススペクトルの再現性と定量性について検討を行った。 その結果,混合物のFI/FDマススペクトルの精度は,各成分の相対イオン感度の差に一部支配されていることが明らかになった。 相対イオン感度は,一般に化合物の分子量とその化学構造に依存しておリ,既にアルカン,シクロアルカンおよび低分子量の芳香族炭化水素など標準物質の相対イオン感度に関する研究が報告されている。 しかし液化油成分は,標準物質に比べ複雑な化学構造と大きな分子量を有していることから,標準物質のデータをそのまま利用することはできない。
 本研究の目的は,液体クロマトグラフ法(LC)とゲルパーミェションクロマトグラフ法(GPC)で分別した液化油成分を試料に用い,そのFI相対イオン感度を求めることであり,更には相対イオン感度に及ぼす液化油成分の分子量と化学構造の影響を明らかにすることである。 含ヘテロ化合物のイオン感度の測定は,本研究には含まれていない。