有機系廃棄物の油化-セルロースの水素分解-
広沢邦男/ 森田幹雄
1985年3月 北海道工業開発試験所報告 35,44-52
我々が日常排出する都市系廃棄物は,埋立,燃焼処理されているのが大部分である。
しかし,その品別組成をみると,排出する都市の性格や景気の動向,季節によって異なるものの,可燃分が75〜90%近くにも達し,その60〜70%は紙類,厨芥類,草木類等のセルロース系物質や炭水化物類で占められていて,年々,排出量の増加とともに,その割合も増加する傾向にある。
これらは廃棄物といえども貴重な有機系資源であり,特に資源の乏しい我が国では再利用可能な物質の回収が重要視され,このための開発研究が種々行われている。
更に最近の石油供給不足や資源保護主義の台頭によるエネルギー危機から都市系有機廃棄物を液体燃料や高カロリーガスに転化して利用しようとする試みが活発となった。
このような目的での水素分化解法に関するものとしては,水酸化ニッケルを触媒としたα-セルロースや紙の接触水素化分解の研究,一酸化炭素と水による都市系廃棄物の分解の研究などがみられる。
また,石油の供給の乏しかった時代や廃棄物処理が問題視される以前にも,セルロースや木材などから油やガスを得ようとする研究が数多く行われている。
このように増加し続ける廃棄物を一度,高カロリーのガスや油に転化し,需要に応じた供給が可能となれば,資源の有効利用に役立つと考えられる。
著者らは,プラスチック廃棄物処理の基礎研究として,その構造特性を活用して再利用可能な物質の回収を主として水素化分解法によって検討してきた。
これらの結果を参考にしながら,同様な視点から都市系廃棄物中のセルロース系物質を油やガスへ転化するための基礎的知見を得ることを目的にして,セルロース物質(木綿)の水素加圧下における接触分解を試みた。
本報告では,このときの活性な触媒の探索ならびに転化率や生成物の分布に与える反応諸条件の影響,反応生成物の性状を検討した結果を述べる。