脱油ハッカ残渣の微生物的利用
田中重信/ 松山英俊/ 横田祐司/ 石崎紘三
1985年3月 北海道工業開発試験所報告 35,1-5
ハッカ草は,多年生唇形科に属する植物で,和種ハッカと西洋ハッカに大別される。
和種ハッカの日本における主産地は北海道で,北見・網走地方を中心に,メントール採取を目的として裁培されてきた。
戦前の最盛期には,作付面積で21,000ha,生産取卸油で780tと世界の総生産量の70%を占めた。
その後,中国やブラジルでも生産されるようになり,また,近年は合成品も出回るようになって,これらとの競合が激しくなった。
北海道農業試験場を中心とする品種改良,栽培方法,機械化栽培体系などの研究が続けられているが,北海道におけるハッカの作付面積は年々減少している。
石油危機以降、再生可能なバイオマスエネルギー源への関心が高まったが,この中で,ハッカは炭化水素を生産する植物,いわゆる石油植物としての可能性から見直されることとなった。
しかし,ハッカの含油率は,品種改良されたものでも生草重量の1%に満たず,バイオマスエネルギー資源としてハッカを考える場合には,油分以外の部分を含めた総合的利用を考える必要がある。
文部省のエネルギー特別研究の中において,生物エネルギーの利用と開発が取り上げられ,ハッカ油中の生理活性物質の検討,ハッカ油によるエンジンテストなどが行われている。
我々は,脱油残渣の利用を検討することとした。
植物体の利用としては,コンポスト化して土地に還元することが考えられる。
植物由来のコンポストは,下水スラッジ由来のものなどと異なり重金属などによる汚染の心配がない特徴がある。
好気的コンポスト化過程において,比較的微生物分解を受けやすい部分は好気的に炭酸ガスと水に分解され,発酵熱を発生する。
一方,反すう動物においては,反すう胃内において嫌気的微生物の作用により,セルロース分を有機酸,糖,菌体などに変えて利用している。
本研究では,有機酸など中間生成物の回収の可能性も含め,嫌気性微生物分解により,微生物分解性の部分を処理することにした。
ここでは嫌気性菌源の検討,発生ガスおよび培養液中の成分変化の測定についての結果を報告する。