トリチウム除去および重水濃縮用疎水性触媒に関する研究
-第2編第2章 触媒充てんカラムの性能試験-
高橋富樹/ 大越純雄/ 佐藤俊夫
1984年3月 北海道工業開発試験所報告 34,20-32
前章で製造した北光型触媒について,水-水素間同位体交換反応用流通型(向流,併流)装置を試作し,その性能を検討した。
すなわち,水-水素間同位体交換反応
HDO(l)+H2(g)=H2O(l)+HD(g) …………(1)
を2の素反応
HDO(g)+H2(g)=H2O(g)+HD(g) …………(2)
H2O(g)+HDO(l)=HDO(g)+H2O(l) ………(3)
に分けて考えると,(2)は気相化学交換反応で触媒が必要であり,これについてはすでに高活性な北光型触媒を開発した。
しかし,向流型充てん触媒層がその本来の性能を十分に発揮するためには,(3)の気液交換反応を十分速かに行わせ,(2)が実際上全反応を律速するようにしなければならない。
このため,白金-テフロン触媒のような極めて疎水性の強い触媒の場合には,親水性充てん剤を1:1ていどの割合で触媒層に混合し,触媒活性の増加に努めている。
このような問題を解決するため,理化学研究所では(2)と(3)を分離した棚段式交換塔を開発し,また水を霧状化して(3)の反応を促進する工夫がなされている。
しかし,このような方法では必然的に装置が複雑となり,建設費が嵩む欠点がある。
本研究は,装置的に最も単純な充てん塔の利点を生しつつ,1)装置をスケールアップしても,また2)フラッディングの起こりやすい向流か法から,そのような心配のない併流法に切りかえても,実際上触媒活性の低下しないような北光型触媒の開発をめざして実施した。
検討項目は,1)向流法と併流法の特徴を明らかにする。
2)触媒層に親水性充てん剤を混合し,向流接触の効率化を計る。
3)反応系に小量の酸素を導入し,その効果を測定する。
4)寸法の異なる成型触媒を試作し,活性を比較検討する。
5)1カ月程度の寿命試験を行い,実機設計用の基礎データーを集積する,などである。