トリチウム除去および重水濃縮用疎水性触媒に関する研究
-第2編第1章 成型触媒(北光型)の製造-

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高橋富樹/ 大越純雄/ 佐藤俊夫
1984年3月 北海道工業開発試験所報告 34,16-19

 トリチウム除去,重水製造を目的とする水-水素間同位体交換反応において,疎水性多孔質物質,特にポラパックQ,ショーデックス104などスチレンジビニルベンゼン共重合体(以下SDBと略記)を担体とする白金触媒が高活性であることはすでに述べた(第1編第1章)。
 しかし,これらは粒径100〜200μmの粉体であるため工業的向流反応塔用触媒としては,細かすぎて実用困難である。 すなわち,上から水,下から水素と向流接触させる向流法では吸収塔におけると同様,直径数mm以上の成型品が必要である。 本触媒のもう一つの問題点は,従来の不均一系気相反応用触媒では,反応ガスは成型触媒を構成する触媒粒子間のすきまを通して,その中心部まで輸送され,従って触媒は内部まで十分利用されたのに対し,向流型反応塔を利用する交換反応用触媒の場合は水と直接接触する成型品の表面層のみが有効と判断されるからである。 そこで,この粉体触媒をエポキシ樹脂,あるいは粉末ポリスチレンをバインダーとして固めたり,粒状ポリスチレン上に固定するなど色々試みたが得られた触媒の活性は何れも小さかった。 これらの経験を整理して,粉体をなるべく大量,しかも単層保持するためには,薄肉の熱可塑性高分子材料が適当と判断し,ポリプロピレンチューブ(PP),ポリエチレンチューブ(PE)に着目し,成型を試みた。 その結果,PPと粉体触媒を混合し,不活性ガス気流中で回転させながら加熱する簡単かつ量産の容易な成型法を開発した。 また,PPにSDB粉体をあらかじめ担持させ,塩化白金酸溶液を含浸させ低温気相還元する方法を開発した。 本章では前者を高温気相還元法,後者を低温気相還元法と呼ぶことにする。