静水圧下(700〜2900kg/cm2)における石炭系アスファルテンの熱処理に関する研究

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中田善徳/ 吉田諒一/ 奥谷猛/ 上田成/ 小平紘平/ 前河涌典/ 吉田雄次
1983年3月 北海道工業開発試験所報告 31,47-54

 熱間静水圧圧縮(HIP)法は金属粉末及びセラミックス粉末を等方圧縮すると同時に加熱処理が行える高温高圧技術であり,その多くの利点の故に近年注目を集めてきた。 例えば,従来の焼結法に比較して低温及び短かい圧縮時間で緻密化が可能であり,また理論値に近い均一な密度及び微細構造の均一性が多くのセラミックスについて得られうるなどの利点を有している。 石炭類,溶剤精製炭(SRC),石炭のエチル化生成物及び石炭モデル物質などの石炭関連物質の高圧下での熱処理は,ピストン-シリンダー型装置(〜500MPa),“Gold Tube”法(〜200MPa)及びオートクレーブ(〜100MPa)などによる研究が行われてきているが,HIP法による高圧下での熱処理では,これらとは異なった研究結果が得られる可能性がある。 このため本報では,石炭系アスファルテン,つまりヘキサン不溶でベンゼン可溶生成物,即ち,石炭液化反応における中間生成物を試料とした場合のHIP法による熱反応特性についての検討を行った。
 アスファルテンの収率は比較的高く,例えば,北海道炭の高圧水素化分解においては20〜50wt.%(無水無灰原炭基準)程度が得られており,カーボンファイバーなどの工業用原料として供給することも可能である。 アスファルテンに関してはその化学構造及び反応性についての研究がなされてきており,炭素材料の原料としても優れた性状を有していることも知られている。
 炭素材料を製造するプロセスは,炭化及び黒鉛化の2つのプロセスからなっている。 有機原料は加熱により水素及び酸素を放出し,炭化プロセスでは,その初期段階において軟化溶融領域を有する液相を経るか,あるいは固相のままで無定形炭素を生成し,そしてこの無定形炭素が黒鉛化プロセスで結晶化する。 黒鉛化プロセスは常圧下では3000℃程度の高温を必要とするが,100MPaから1000MPa程度の高圧下では,緻密化及び黒鉛化が1500℃付近の温度から起こることが報告されている。 本報は,石炭系アスファルテンをHIP法を用いて,68.6MPa(700kg/cm2)から284.4MPa(2900kg/cm2)の高圧下で800℃から1400℃の比較的低温で熱処理を行い,炭化-黒鉛化の可能性についての検討を行ったものである。