熱天秤による北海道産木材の熱分解特性
野田良男/ 石橋一二
1983年3月 北海道工業開発試験所報告 31,35-46
近年,バイオマス研究の一環として,再生産できる森林資源の有効利用法が強く望まれている。
木材は,古くから木炭の製造,パルプ,木製品など多くの利用がなされたが,例えば木炭の製造は1957年代では,世界の木炭総生産量のうち日本は1/3の153万ton/年が生産されていたが,その後石炭,石油等に燃料の転換が計られ現在では37,505ton/年を切っている。
木炭の生産量の減少と副生物の生成液が不均質なため,メタノール回収,木酢などの製造等が後退した。
さらに,合成化学の発達は石油製品から安価に他の副成品も生産されることも原因となった。
オイルショック以降,上にのべた資源の有効利用法としてガス化燃料化など林産資源のエネルギー化が進められている。
我々は,すでに林産及びパルプ工場廃棄物を用い流動層による活性炭の製造を試みてきた。
これらは,熱分解時の炭化物を原料とするものであり,出発原料である木材の熱分解に関する資料が重要となる。
本報では,上にのべた活性炭原料のみではなく,道産資源の将来の利用法の基礎的な資料を作成することを目的として,主に道産木材について熱天秤を用い熱分解時の木タール量と残渣物量を求めた。
道産木材については,上にのべた報告はほとんどなく,わずかにミズナラ(Quera Monglica Var Grosserrata)の芯材部を用い,電気炉(窒素気流中)によって炭化温度と炭質の影響を調べた里中の報告がみられる程度であり,本報の系統的な試験結果は意義があるものと考えられる。