界面の振動スペクトルの測定
日野雅夫
1983年3月 北海道工業開発試験所報告 31,1-14
最近のAES,XPS,UPS,SIMSなど電子分光法による表面分析研究には,目を見はるものがある。
赤外分光など,この方面での従来からの分析手法が忘れられたかの感さえいだかせられる。
周知のように,赤外分光法は表面の研究に応用された分光法のうちで最も古い歴史を持つものである。
AESなどが原子レベルでの情報を与えるのに対して,赤外吸収を含めた振動スペクトルは分子,ないしは化学結合レベルでの情報を与えるものであり,表面化学種の状態分析に極めて有効な手法である。
この意味で,その重要性は今日においても何ら変わりはない。
今日,表面ないしは界面の振動スペクトル測定法としては,赤外分光,中でも透過吸収法が最も一般的に用いられる。
これは,分光器さえあればあとは手製のセルでも手軽に測定できるからであろうが,この手法には明らかな限界がある。
つまリ,後述するように,この手法には本質的な問題としての多くの難点があり,どんな系でも測定できるものでは基よりない。
我々の研究グループでは,これまで赤外による表面種分析法の研究を実施してきたが,表面種スペクトルの解析法の研究であったので,対象は測定できるものだけを選べばそれでよかった。
しかし最近,研究テーマの変更により何でも測定しなければならない必要に迫られた。
そこで,どのような目的で,どのような系を測定するには,どのような手法が良いのか,それらがどこまで可能になっているのか,最近の到達点を中心に調べてみた。