用水のクローズドシステム化

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高森隆勝/ 関口逸馬
1982年8月 日本鉱業会誌 1134,727-732

 用水の循環使用に際して,最も危惧されるのは残留試薬の影響である。 選鉱工場内の各種シックナ溢流水を用いた浮選試験が,各工場で行なわれ,清水を用いた時の試験結果と比較せられた。 その結果は両者の間に大きな差はないと判断される場合が多く,若干の場合に,硫化鉄や亜鉛の抑制を困難にする結果を生じた。 残留試薬の影響の現われ方は,操業の実態と密接に関係するものであるから,一般論はあり得ないが,試薬添加量の調節が必要最小限のレベルで行なわれ得るならば,また,若干の水質調節の配慮を行なうならば,十分に高い割合で用水を循環使用し得ることを示していると考えられる。
 次に問題とされるのは,循環による蓄積が選別に及ぼす影響である。 蓄積過程や定常状態についての推定の方法は後述のようにいくつかあるが,工程に何らかの影響を及ぼす化学種の挙動は各工場において独自に把握する必要がある。 これら化学種は系内で吸着しあるいは,化学反応によって沈殿を形成したり,錯体を形成するなどして消費される可能性があり,それらの挙動は鉱石の種類と操業の条件によって異なるものである。
 選炭工場における用水の繰返し使用割合は比較的高く,完全循環使用に極めて近い状態の工場も数工場ある。 これは,選別の主体が比重選別であることが一因と考えられるが,水質規制に対処するため,多くの工場で完全循環を目標として真剣な努力がなされた結果到達した貴重な成果といい得るであろう。 同様の成果は,選鉱工場の場合,90%以上を達成している前述3工場の場合に見られるであろう。