高分子材料の耐久性に関する研究
[熱可塑性プラスチックシートの耐候性-ポリエチレンの耐候性]
西村興男/ 窪田大/ 鈴木智/ 伊与田惇/ 吉川喜治/ 代田忠
1981年3月 北海道工業開発試験所報告 24,80-95
ポリエチレン(以下PEと略記する)の光劣化の機構に関する文献は多く,この3年間に限っても20報に近い報告がある。
たとえば,Frayerらは高密度ポリエチレン(以下HDPEと略記する)の劣化における分子的メカニズムを実験的に解明し,特に環境応力亀裂について検討し,動的粘弾性,赤外吸収スペクトルおよび引張試験によって,結晶領域の間を結ぶ分子が関与する内部応力の緩和機構説を再確認したと報じている。
Zamorskyらは分岐PEシートを1年間大気中に暴露し,酸化,主鎖の切断,架橋などの化学構造変化と,引張強度,破断伸びなどの力学的特性変化を関連づけて報告している。
海老沢らはフーリェ変換赤外分光光度計を用いて劣化PE中に生成する各種極性基を定量的に求め,機械的性質の変化との関遅から劣化機構を検討し,紫外線吸収剤を含む場合は主に架橋構造の生成により劣化が進行し,紫外線吸収剤を含まない場合は主に分子鎖の切断により劣化が進行すると推論している。