1-(2-ピリジルアゾ)-2-ナフトール錯体とEDTAの配位子置換反応速度を利用するカドミウム(II)とマンガン(II)の同時定量法
中川孝一/ 緒方敏夫/ 原口謙策/ 伊藤三郎
1981年3月 分析化学 30,149-153
カドミウム(II)とマンガン(II)の速度論的同時定量法を検討した.
これら金属イオンの1-(2-ピリジルアゾ)-2-ナフトール(PAN)錯体とEDTAとの配位子置換反応はほぼ同じ反応速度を有するが,アンモニア共存下pH8.8における反応はカドミウム錯体の反応が大きい接触効果を受け,マンガン錯体の反応より約10倍速度が大きくなることを利用して両者の分別定量を行った.
反応の追跡はアルコールと界面活性剤を併用してPAN錯体を溶解した水溶液とEDTA水溶液とをストップドフロー装置で混合して行った.
亜鉛(II),銅(II),コバルト(II),ニッケル(II)及び鉄(II)などのPAN錯体はマンガン錯体の反応に比して1/40以下の反応速度であり,分離あるいはマスキング操作を行わなくても影響を与えなかった.
又,多くの陰イオンも影響しなかった.
本法により3μg/50cm3のカドミウム(II)及びマンガン(II)を±3%以内の誤差で迅速に定量できる.