13C-NMRによる石炭液化油の構造解析

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吉田忠/ 前河涌典/ 内野洋之/ 横山晋
1980年6月 日本化学会誌 1980.908-915

 従来の1H-NMR法にかわって13C-NMRによる石炭液化油の構造解析法を検討する目的で,標準試薬の化学シフトデータと液化油の液体クロマトグラフィー分別物のスペクトルから各タイプの炭素の帰属を行なった。
 芳香族炭素は水素化芳香族炭素(Protonated),内部炭素(Bridge head),置換炭素(Substituted)の3グループに分割でき,これら炭素の化学シフト範囲はそれぞれ(115.0)〜129.2ppm,129.2〜132.5ppm,132.5〜149.2ppmであった。 これら炭素の面積強度比から,Brown-Ladner法の概念に基づいて各構造指数(fa,Hau/Ca,σ)の新たな算出法を導いた。 この方法は仮定を必要としないので得られる各構造指数値はBrown-Ladner法よりも正確であり,さらに芳香族部分の骨格構造についてより詳しい構造的知見を与えた。 またα位脂肪族炭素の帰属,定量が可能となり,その結果,液化油の芳香族部分の骨格構造のみならずアルキル側鎖やナフテン環などに関する知見も得られ,液化油分子の平均化学構造をより詳細に推察できるようになった。