各種北海道炭の高圧水素化分解反応機構
長谷川義久/ 前河涌典
1980年6月 日本化学会誌 1980,916-922
試料として宗谷炭(C 70.3%),住吉炭(C 75.5%),太平洋炭(C 76.7%),夕張炭(C 84.0%)を用い,反応時間を変化させて高圧水素化分解反応を行なった。
反応生成物はヘキサンとベンゼンを用いて分別し,その分別成分の構造指数を1H-NMR,元素分析,分子量測定などの結果から算出し,その指数の反応の経過にともなう変化の追跡から,各試料炭の高圧水素化分解反応機構を解析し,比較検討した。
全試料炭に共通した化学反応は構造単位間結合の開裂(解重合),脱アルキル,芳香族環の水素化分解であった。
また基本構造単位の芳香族縮合環の小さな石炭,含酸素構造の多い石炭は芳香族環の水素化分解反応を受けやすく,また芳香族環の水素化分解反応は他の二つの反応よりも過酷な条件を必要とした。
したがって,反応条件によってそれぞれの反応の進行状態が異なり,同一石炭からの同一溶剤分別成分であっても,反応条件が異なった場合には,異なった化学構造を有する化合物が得られた。