非イオン性界面活性剤及びチオシアン酸塩を用いるモリブデンの吸光光度定量

問合わせ ひとつ戻る DB入口へ トップページへ

林謙次郎/ 山本篤夫/ 藤村康江/ 伊藤三郎
1980年7月 分析化学 29,T39-T43

 モリブデン-チオシアン酸錯体水溶液に非イオン性界面活性剤であるトリトンX-100を共存させると,水溶液中におけるその錯体の呈色は安定となり,かつ呈色感度も増加することが分かった. 又,この溶液に鉄を共存させ,その作用を調べたところ,鉄は呈色錯体生成の触媒として働くことが分かった. この錯体はプロトンを対イオンとしてトリトンX-100のミセルに取り込まれると推定される. 吸収極大波長は468nmにあり,この波長でのモル吸光係数は1.7×104cm-1mol-1dm3であった. これらのことを利用して,モりブデンの吸光光度定量を試みたところ,最適と思われる条件,すなわち,鉄2mg/50cm3,硫酸濃度0.22mol dm-3,トリトンX-100濃度0.8%,アスコルビン酸濃度0.32mol dm-3及びチオシアン酸カリウム濃度0.30mol dm-3で,(1〜233)μg/50cm3の範囲でベール則が成立した. 鉄鋼試料中のモリブデン定量への応用を試みたところ良好な結果が得られた.