フライアッシュの肥料化について
稲田武
1979年3月 北海道工業開発試験所技術資料 8,43-50
これまで火力発電所から排出された石炭灰は,大部分が土木用材として利用され,農業分野への利用としては,一部が土壌改良材として年間1.5〜2.0万t程度利用されているに過ぎない。
今日,新たにフライアッシュを肥料として利用することが計画されている。
これはカリ肥料としてであって,前述の土壌改良材とは質的に全く異ったものである。
従来から苛性カリとシリカとを混焼すると,水に難溶性でクエン酸に溶解するく溶性物質(K2SiO3)を生成することは知られていたが,シリカを生産もしくは輸送したりすることが経済的に問題とされていた。
これに対し電力中央研究所は,昭和38年シリカ源として石炭灰に着目し,石炭灰から肥料を生産する研究を始めた。
我が国は,地形からみても平野が少なくその大部分が丘陵及び山岳地帯で占められ,しかも気象的には温暖多雨型で,年間平均1,500〜3,000mmもの降雨があり土壊中の肥料分が流出するため肥沃な土壌が保持し得ない。
また一方では約一世紀にわたって,塩化物・硫酸塩等の肥料を多量に連用した為,土壊は酸性化しひへいしている。
近年は尿素,溶燐,重焼燐,燐安等,無硫酸塩肥料が開発され実用化されているが,カリ質肥料について一向に改善を見ないまま今日に至っている。
カリ肥料は塩化カリとして100%輸入されているが肥料として吸収されるカリは少く塩素は土に捨てているのと同じことでむしろ害を与えているのが現状である。