水蒸気による炭化水素の改質
-芳香族炭化水素と水蒸気との反応-

問合わせ ひとつ戻る DB入口へ トップページへ PDF(イメージ)を見る

小谷川毅
1976年3月 北海道工業開発試験所技術資料 6,9-14

 MaslyanskiiらはNi-Cr2O3触媒上でC6〜C10アルキルベンゼンと水蒸気との反応について系統的に研究を行っている。
 水蒸気および水素処理したNiCr2O3触媒上での反応結果を示した。 反応条件は,430℃,SV=1h-1,水/トルエン(モル比)3,である。
 550℃で水蒸気処理した触媒はほとんど失活しているが,これを430℃で水素還元すると活性の回復がみられるところから,この触媒の活性種はニッケルであると述べられている。
 また,350〜430℃の反応温度でキシレン,トリメチルベンゼン,イソプロピルベンゼン,第3級ブチルベンゼンと水蒸気との反応を行い,それぞれの反応速度から脱アルキル反応の径路が考察されている。 キシレン異性体の場合,m,p-キシレン>トルエン>o-キシレンの順に反応速度が小さくなる。 また,m,p-キシレンはトルエンを径てベンゼンに脱アルキルされるが,o-キシレンの場合は平衡転化率を上回ってベンゼンを生成することから,トルエンを径由する以外に隣接する2つのメチル基が同時に脱アルキルされることも示唆されている。
 トリメチルベンゼン異性体の場合,反応速度はメシチレン(1.3.5-トリメチルベンゼン)>m,p-キシレン>プソイドキュメン(1,2,4-トリメチルベンゼン)>トルエン>o-キシレン>ヘミメリトール(1,2,3-トリメチルベンゼン)の順に小さくなっている。 このような傾向はキシレン異性体の場合にもみられ,この反応におけるアルキルベンゼンの構造依存性はメチル基が分散しているものほど反応性に富む。