フライアッシュ 蒸気養生・オートクレーブ(産業廃棄物の水熱反応による建材化技術)
井上憲弘
1996年6月 九州コンクリート研究会第78回技術研究会 コンクリート粉粒体, 九州 96,195-203
産業廃棄物の中でも排出量が多いスラグおよび石炭灰をとりあげ,九州工業技術試験所で行った高炉水砕スラグおよびフライアッシュを主原料とした建材の製造研究について紹介する。
筆者らはこれまでに,南九州に広く分布し,ガラス相を主体とする火山噴出物「シラス」を対象にゲル化を軽量化手段とする建材製造に関する研究を行い報告した。
シラス,水さいおよびフライアッシュいずれもガラス相という共通点はあるが,化学組成,含有結晶鉱物,粒子形状等はそれぞれ異なる。
フライアッシュの本法に対する原料適性を評価する上には,シラス,水さいとの比較試験が適当であると考えて実験を行った。
本実験においてガラス相含有率と軽量化性の間には明確な相関関係が認められなかった。
これらの結果は,水熱反応原料としてフライアッシュを使用する場合には,鉱物組成や化学成分はもちろん,粒形や粒度など別の観点からも性状を評価する必要があることを示唆している。
セッコウの配合は強度発現に有効であった。
特に,オートクレーブ養生において,強度の向上は著しく,セッコウを5%配合しただけで配合しない場合に比べて,B試料およびE試料が9割,D試料が8割,A試料が4割そしてC試料が3割の強度の向上が認められた。
前節の実験では,セッコウ配合による強度の向上は1割程度にとどまったが,本実験において,このような強度の大幅な向上は,石灰の配合が10%から20%に増加したことによる。
すなわち,刺激剤としての石灰の増加がフライアッシュとセッコウとの反応を促進させ,強度発現に寄与するケイ酸カルシウム水和物の生成量を増大させたためである。
オートクレーブ養生は蒸気養生に比較すると,同一かさ比重でも高強度を与えた。