フライアッシュ 蒸気養生・オートクレーブ(フライアッシュの水熱反応と硬化特性)
井上憲弘/ 恒松修二/ 原尚道
1996年6月 九州コンクリート研究会第78回技術研究会 コンクリート粉粒体, 九州 96,180-183
フライアッシュは燃焼炭の種類,燃焼方法,燃焼条件および捕集方法のちがいにより異なった性状を示すことが知られている。
筆者らは西日本地区の異なった発電所から出る5種類のフライアッシュを対象に,石灰,せっこう存在下における水熱反応性およびゲル化硬化体特性に及ぼす効果を調べ,さらに鉱物組成と化学成分との関係についても検討を加え,以下の結果を得た。
(1)石灰配合率を20%とし,80℃4時間のゲル化を行ったところ,すべての試料にカルシウムサルホアルミネート水和物の生成が認められた。
せっこうを配合しない場合,SO3含有率の特に高いAおよびD試料にモノサルフェートの生成量が多く,AおよびC試料にはエトリンガイトの生成も認められた。
せっこうの配合率を高くするにつれてモノサルフェートよりはエトリンガイトが生成しやすかった。
(2)蒸気養生では,石灰,せっこうともに反応が進み,せっこう配合率5〜10%ではモノサルフェートの生成量が,せっこう配合率15〜20%ではエトリンガイトの生成量が増えた。
(3)オートクレーブ養生では,カルシウムサルホアルミネート水和物は分解し,U型無水せっこうを遊離する。
11オンブストロームトバモライトの生成量は少なく,ハイドロガーネット(C3ASH4)が生成しやすかった。
(4)ガラス相含有率の高いフライアッシュほど硬化体の軽量化性はすぐれているが,強度は低下した。
(5)せっこうの配合は軽量化および強度表現に有効であり,最適配合率はフライアッシュの性状によりばらつくが,5〜15%の間にある。
(6)オートクレーブ養生は,蒸気養生に比較すると同一かさ比重でも高強度を与えた。
(7)オートクレーブ養生におけるハイドロガーネットの相対生成量は強度に対して正相関を示した。