フライアッシュ 蒸気養生・オートクレーブ(フライアッシュの水熱反応ならびに硬化特性)
井上憲弘/ 恒松修二/ 原尚道
1996年6月 九州コンクリート研究会第78回技術研究会 コンクリート粉粒体, 九州 96,161-172
筆者らは,フライアッシュにゲル化を応用することで軽量コンクリート製造が可能であると考えた。
フライアッシュはSiO2とAl2O3を主成分とするため,ゲル化でカルシウムサルホアルミネート水和物とC‐S‐Hを生成するように,石灰とセッコウを配合原料(反応原料)として選んだ。
筆者らは,火山灰や高炉水砕スラグのようなガラス質ケイ酸アルミを用いて良好な軽量化性を得るには,これらの水和物の生成が望ましいことを別に報告している。
この報告は,西日本の異なった発電所から出る5種類のフライアッシュのゲル化と硬化体物性を高炉水砕スラグおよび火山灰と比較したもので,次の結果を得た。
(1)石灰配合率を20%とし,80℃,4時間のゲル化を行ったところ,フライアッシュA〜E試料のすべてにカルシウムサルホアルミネート水和物の生成が認められた。
セッコウを配合しない場合SO3含有率の特製に高いAおよびD試料にモノサルフェートの生成量が多く,AおよびC試料にはエトリンガイトの生成も認められた。
セッコウの配合率を高くするにつれてモノサルファートよりはエトリンガイトが生成しやすかった。
(2)蒸気養生では,石灰,セッコウともに反応が進み,セッコウ配合率5〜10%ではモノサルフェートの生成量が,セッコウ配合率15〜20%ではエトリンガイトの生成量が増えた。
(3)オートクレーブ養生では,カルシウムサルホアルミネート水和物は分解し,U型無水セッコウを遊離する。
11オンブストロームトバモライトの生成量は少なく,ハイドロガーネット(C3AlSH4)が生成しやすかった。
(4)ガラス相含有率の高いフライアッシュほど硬化体の軽量化性はすぐれているが,強度は低下した。
(5)セッコウの配合は軽量化および強度発現に有効であり,最適配合率はフライアッシュの性状によりばらつくが,5〜15%の間にある。
(6)オートクレーブ養生におけるハイドロガーネットの相対生成量は強度に対して正相関を示した。
(7)フライアッシュ系,水さい系およびシラス系で得られたゲル化硬化体を比較すると,水さい系は軽量化性にすぐれ,フライアッシュ系は軽量化性は劣るが高強度を示し,シラス系は両者の中間的な物性を示した。