フライアッシュ 蒸気養生・オートクレーブ(石灰,せっこう存在下におけるフライアッシュ,水さいおよびシラスのゲル化ならびに硬化特性)

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井上憲弘/ 原尚道
1996年6月 九州コンクリート研究会第78回技術研究会 コンクリート粉粒体, 九州 96,157-160

 南九州に広く分布する火山噴出物「シラス」,および高炉水砕くスラグ(以下水さいと略称する)は,いずれもガラス相を主体とするため,石灰,せっこう存在下100℃以下でも水熱反応し,カルシウムサルホアルミネート水和物,C‐S‐Hなどを生成するので,懸濁状における同反応,すなわちゲル化を軽量化手段とする建材製造が可能であることについてはすでに報告した。
 石炭灰は回収場所により性状は異なるが,その大部分はフライアッシュとして回収されている,フライアッシュもシラス,水さいと同様にガラス相を主体とするので,同様にゲル化による軽量建材化が可能ではないかと考えた。 しかしガラス相という共通点はあるが,化学組成,含有結晶鉱物,粒子性状等はそれぞれ異なるので,フライアッシュの本法に対する原料適性を評価する上には,シラス,水さいとの比較試験が適当であると考えて本試験を行い,次の結果を得た。
 (1)フライアッシュからも水さい,シラスと同様に,ガラス相を主成分とするため石灰,せっこうを配合することにより,ゲル化軽量建材製造が可能である。
 フライアッシュは,化学成分としてはSiO2の次にAl2O3を多く含むため,軽量化を目的とする場合,エトリンガイト生成量を増すようにゲル化条件を設定すべきである。
 フライアッシュのSiO2含有率はシラスには劣り,また水さいに比べるとCaO含有率は低いので最適石灰配合率は,シラスおよび水さいの中間にとるべきである。
 (2)石灰およびせっこう配合率,ゲル化温度,ゲル化時間,蒸気養生またはオートクレーブ養生と製造条件を変えて実験した結果,フライアッシュ系で,たとえば外割り重量比で石灰15%,せっこう7%配合で,ゲル化しない場合かさ比重が1.38〜1.34であるのに対して,80℃で4時間ゲル化することで1.15〜1.09までかさ比重を低下できた。 クリソタイル石綿5Rを外割り重量比10%配合したこれらの硬化体の曲げ強度はそれぞれゲル化なしで70.3〜88.3s/p2,ゲル化したものは60.3〜74.8s/p2を示した。 ただし,前者は蒸気養生,後者はオートクレーブ養生で得られた値である。
 しかし本実験は,広範囲に選べる実験要因を網らしたわけではない。 したがって,製造条件をさらに適切に選ぶことによって,軽量化性ならびに強度の向上は可能と考えられる。