グループ概要

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 情報・人間工学領域 人間情報研究部門 身体適応支援工学研究グループPhysical Fitness Technology Group)は、高齢社会において安全・安心で質の高い生活を実現するため、運動やリラクゼーションを手段として動作や循環機能などに関する身体適応力を向上させる技術開発や、動作機能が低下した高齢者にも適した支援機器や生活環境を構築する技術開発を進めています。

この写真には、天気のよい日の散歩道で、車いすのおじいちゃんの周りに、お父さんとお母さんと孫が笑顔で集う様子が描かれています。

代表的な研究

高齢者の食事支援

咀嚼(噛むこと)・嚥下(飲み込むこと)機能が低下すると、誤嚥(間違って食物が気管に入ること)による窒息や肺炎のリスクが高まるだけでなく、食べる意欲さえも失ってしまい、健康状態を維持することが難しくなります。咀嚼・嚥下機能が低下した高齢者に対しては、食事を単に栄養補給の問題として考えるのではなく、食べる楽しみを失わない支援を行っていくことが重要です。そこで咀嚼・嚥下機能を定量的に評価する技術や介護食の食感を豊かに感じさせる技術の開発を進めています。

この図は、食欲のない高齢者が、咀嚼音を聞くことによって楽しく食事ができるようになる様子を表している図です。
図の説明 食感のない介護食が、シャキシャキザクザクという咀嚼音による食感改善で食べる楽しみが向上します。

触覚機能を客観的に評価するデバイスの開発

この研究では、先天的な触覚過敏/鈍麻(触ったものを強く感じたり弱く感じたりすること)傾向にある人たちや後天的な疾患により生じる触覚感覚の機能低下などにより、モノに触れることが苦手な人たちや他者との触れ合いを困難に感じる人たちを対象として、触覚機能を客観的に評価するデバイスの開発を行っています。 この研究が実現することで,我々が無意識下で行っている触れる動作を再認識する機会を増やし、個人の身体機能・イメージを俯瞰的に(全体を高いところから見下ろすように)知ることでQOL(生活の質)の向上を期待しています。

この図は、おじいさんが左手で触覚の機能を調べる装置を触っている様子を表している図です。
図の説明 定量的な触覚刺激を用いた触覚機能評価デバイス

高齢者の生活機能低下予防に向けた運動支援手法の研究

高齢者の生活機能(歩行や移動など日常生活を営むための基本的な能力のこと)の低下を予防するため、各地域で運動教室をはじめとする保健活動が行われています。一方で、保健活動から脱落してしまう層保健活動に参加せず継続的な運動に取り組んでいない層に対する支援にも取り組んでいく必要があります。そこで、高齢者が自己主体感(自分の行動は自分によって引き起こされるという感覚)をもって運動に取り組み行動意欲の喚起へとつなげられるような運動支援技術の開発を進めています。

この図は、左側でおばあさんがロッキングチェアに座って編み物をし、右側でおじいさんが椅子に座って新聞を読みながら、足を動かす運動をしている様子を表している図です。
図の説明 日常的な生活シーンのなかでも実施することができる運動支援を行うことで運動の習慣化を助けます。

身心win-win連携が担う障害やストレスへの適応機構の研究

身心何れか一方の障害でも、双方の関係はlose-loseとなりやすいことが知られています。例えば、過度なストレスはこころの問題に留まらず、日常生活の身体活動の質へも影響しますし、リハビリテーションに取組む気持ちはその効果をも左右します。身心のwin-win連携を支援する方法論を、生物の適応力に着目して構築することが本研究の目的です。これらに寄与するとされる前頭葉皮質機能は、ヒトでも動物でも目的行動の達成に必要な記憶(作業記憶)を担います。特に、長期記憶の影響の少ない作業記憶機構を礎にして、種を越えて幅広い視点から研究目的の達成を目指しています。

この図は、両手に持つペンの加速度を計測しつつ、タブレットへのポインティング位置から視覚性作業記憶の精度を研究する装置の概観です。
図の説明 秒単位のヒト視覚性作業記憶精度を、ペンのマイクロ動態とポインティング精度の関係から解析するために考案した研究装置

牽引力錯覚に関する研究

急激に変換する加速度と緩やかに変化する加速度が交互に繰り返される非対称な振動を指先に提示すると、振動を一方向に牽引されるような力として錯覚することが知られています(牽引力錯覚)。牽引力錯覚は単純な振動刺激だけで手が引かれたり押されたりする感覚や運動を誘発できるため、モバイル機器における新たな情報提示手法や上肢動作のリハビリへの応用が期待されています。本研究では牽引力錯覚の工学的応用を目指し、錯覚が起きる条件やメカニズムを明らかにします。

この図は、右手に持ったデバイスが非対称に振動することで、右手が引っ張られるような錯覚が起きていることを示す図です。
図の説明 手に持ったデバイスが非対称に振動、手が引っ張られるような錯覚が起きています。