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【地域トピックス−砕石場の崩落事故−】

2001年(平成13年)3月12日,岡山県総社市下倉の砕石場で死者2人,行方不明者1人を出す岩盤崩落事故が発生しました.砕石場は高梁川(1級河川)の河道沿いに位置するため,砕石切羽岩盤から崩落した土石が同川に沿う生活道路(市道)を直撃して分断し,同川の河川敷まで埋め潰しました.

崩落事故発生から約2年を経た現在も修復工事は継続されていますが,崩落した土石の除去はあまり進捗していません(写真1).高梁川を差し挟んだ対岸の近地点から岩盤崩落斜面を観望すると,崩落は頂部から下部へ扇状形を呈して河道にまで達しており,崩落斜面は高さ80〜150m,扇頂部付近の横幅20〜30m,扇端部付近(河道到達部付近)の横幅80m以上で,崩落斜面の見掛け上の傾斜は60〜40度を示します.また,崩落斜面全面には多数の落石巨岩が残り,特に,扇央部付近には山頂から崩壊・落下した岩塊が立ち木を付けた状態で残置されており,崩落の凄絶さを見せています(写真2).

20万分の1地質図「高梁」(寺岡ほか,1996)によると,本砕石場近傍の地質は二畳紀舞鶴層群の泥岩が広範囲に分布しています.私は本砕石場の砕石切羽を直接に観察していないので,採掘・稼行される泥岩の岩質には言及できません.しかし,一般に泥岩の岩質は含有される水分量や粘土鉱物組成によって千枚岩化して薄板状に割れたり,盤膨れ状態(岩盤剥離状態)などになりやすい岩質のため,泥岩からなる砕石切羽は落石・崩壊防止覆工を施工する必要があります.さらに砕石切羽岩盤に大規模な流れ盤や断層破砕帯などが生じていると,岩盤の崩壊や落石の危険度が増大します.したがって砕石場の開発に当たっては地形,地質,岩質,岩盤の地質構造などを十二分に考慮して砕石切羽を造成することが重要でしょう.

砕石場は常に災害の危険と隣り合わせにあるために砕石切羽岩盤の保全・整備は不可欠であり,危険防止対策を十分に施してから作業に取り掛かることが望まれます.

(小村 良二,2003.7)

進んでいない修復工事
写真1

崩落の様子
写真2

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