【地域トピックス−福井・九頭竜川の海水遡上と砂利採取−】
福井県と岐阜県の県境付近に源流を発し,福井平野を潤して日本海に注ぐ九頭竜川は,総延長約116kmに及ぶ福井県一の河川です.また,九頭竜川の流域面積は約2,930km2と広大で,同流域は近畿地方で有数の砂利採取地となっています.最近,九頭竜川水系の環境に関わるいくつかの問題が生じており,そのうち,砂利採取に無関係でないと思われる一問題が含まれています.それは九頭竜川に日本海から海水が遡上していることです.
同川の海水の遡上は河口からかなり上流の支川18km付近にまで確認されているようで,同川から利水する農業に塩害の被害が生じていることが報告されています.河川における海水の遡上は水質悪化(塩水化)の一要因となり,河川に生息する魚類や水生昆虫・水生植物などに甚大な被害を与え,また,河川から利水する農業や工業などに深刻な被害をもたらすので,しばしば全国各地で報道されるところです.
九頭竜川流域に位置する砂利採取場への塩水被害は,現在のところ報じられていません.しかし,かつて西日本では,十分な洗浄をせずに出荷した瀬戸内海の海砂を建材に使用した結果,重大な社会問題になったことがありました.川の水位が低下するこの時期,九頭竜川の塩分濃度がどの程度に達しているのか詳細は不明ですが,上述した過去の例からしても同川の海水遡上(塩水化)とその流域における砂利採取は,無関係ではあり得ません.
九頭竜川の海水遡上の問題は,今後も注視する必要がありそうです.
(小村 良二,2003.7)