■ ご挨拶 ■

 水不足は21世紀の世界が直面する最大の問題の一つであり、アジア、アフリカを中心に約10億人が安全な水を確保できないといわれています。一方、世界の多くの国では今後の水市場の拡大を見越して水ビジネスを国家戦略として育成しており、水資源の管理・運営に優れた水メジャーと呼ばれる海外企業に加え、新規企業の参入等、国際競争が激しくなっています。このような状況に対処するためには、産学官の連携を深めるとともに、ニーズに適合した技術開発を強化することが重要です。
 産総研では、水質評価技術と水処理技術とを情報技術によって融合して、安全でかつ効率的な水資源の管理に関する技術開発を実施しています。具体的には、水質評価では、TOCや重金属、内分泌攪乱物質とその生物影響、微生物などを対象として、「メンテナンスフリー」、「ポータブル」、「リアルタイム」をキーワードとする技術開発を行っています。水処理としては、MBR関係では微生物群集の変遷、バイオファウリングのメカニズム解析と対策技術などの基盤的研究を行っています。また、光触媒や吸着剤との複合材料を利用した滅菌、医薬品や化成品等(PPCPs)の吸着分解効率の体系的評価を進めています。
 産総研はわが国の代表的な研究機関として、海外の国立研究所、大学等と人的交流および共同研究を実施していきます。主な協力機関としては、ベトナムVAST(ベトナム科学技術アカデミー)、タイNSTDR(国立科学技術開発庁)、TISTR(科学技術研究所)、シンガポールNUS(シンガポール大学)、PUB(公益事業庁)、インドネシBPPT(技術評価応用庁)、中国清華大学、MOST(科学技術部)などがあげられます。
 これらの海外の研究機関、国内外の大学、企業、地方自治体とのネットワークを強化し、研究成果を国際標準化並びに処理設備の管理・運転も含めたビジネスモデルの実現に結びつけ、国際的な水問題の解決と水市場における日本企業のシェア向上に貢献することを目指します。

プロジェクトリーダー 羽部 浩 (2023年4月付)