青森県産オオヤマザクラ(Cerasus sargentii)
果実エキスの開発と美容製品への利用

Development of extract from Ooyamazakura (Cerasus sargentii) fruit produced in Aomori Prefecture and use for cosmetics

地方独立行政法人青森県産業技術センター弘前工業研究所 
機能性素材開発部 研究管理員

岩間  直子

  当センターでは青森県産素材を利用した製品の競争力強化を目的として、より機能性等の付加価値の高い健康食品・化粧品開発に取り組んできており、その中で、オオヤマザクラ果実の機能性評価及び美容製品への利用に関する研究開発を実施しました。
  オオヤマザクラ(Cerasus sargentii)は、バラ科サクラ属の落葉高木で、中部地方以北の山地に自生している野生種の桜であり、青森県では、津軽地方の岩木山沿いに人工的に植樹されています。 我々はこれまでにオオヤマザクラの果実のエタノール抽出エキス(以後、オオヤマザクラ果実エキス)において、非常に強い抗酸化活性を見出しており、生体内酸化ストレスの緩和作用が期待できると考えました。 特に、皮膚老化は主に紫外線等によるROS(活性酸素種)の産生亢進と生体内の抗酸化システムの機能低下等による酸化ストレスによって引き起こされることが知られており、オオヤマザクラ果実エキスでその酸化ストレスを緩和することにより皮膚の老化防止ができるのではないかと考えられました。 そのため、皮膚に対するオオヤマザクラ果実エキスの抗酸化ストレス及び抗シワ作用等の美容機能性について評価し、アンチエイジング化粧品素材としての有用性を検討しました。
  オオヤマザクラ果実エキスについて、呈色反応の比色分析による各種活性酸素消去作用の評価を行った結果、過酸化水素とスーパーオキシドアニオンに対する消去作用が見出されました。 一方、ヒト表皮角化細胞HaCaT keratinocyteを用いた評価では、オオヤマザクラ果実エキスの添加によって細胞内過酸化水素量の減少と、さらに過酸化水素や紫外線(UVB)曝露による細胞傷害に対する緩和作用が認められたことから、オオヤマザクラ果実エキスが皮膚酸化ストレス抑制効果を有することが明らかとなりました。 また、ヒト表皮角化細胞と真皮線維芽細胞を用いた評価系において、オオヤマザクラ果実エキスに細胞外マトリックス(コラーゲン)分解酵素MMP-1産生抑制作用が見出され、皮膚のシワ形成防止に有用であると考えられました。
  以上の結果から、オオヤマザクラ果実エキスは、UVB等によって誘導された細胞内活性酸素による皮膚酸化ストレス及びシワ形成を抑制する効果があり、皮膚のアンチエイジングに有効な素材であると考えられました。令和元年に化粧品原料素材として実用化され、商品名「Aomori Cherry Extract」で現在販売されており、石鹸等の化粧品に利用されています。


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