劣化ABSの強度測定と表面観察

事例No.

YN-0002

概要

屋外暴露を行ったABS試験片とメタルハライドランプ式耐候性試験機による照射を行ったABS試験片の材料試験(引張試験)と電子顕微鏡による表面観察を行った。引張強さ測定結果と表面観察結果から、屋外暴露を行った場合と耐候性試験機による照射を行った場合の劣化機構の違いを考察した。

お困りごと・要望

耐候性試験機による照射と屋外暴露との違いを知りたい

事例提供機関

山梨県産業技術センター
企画連携推進部尾形 正岐

事例に関するお問い合せ

サンプル

市販のABSシートから図1に示す形状に切り出し屋外暴露とメタルハライドランプ式耐候性試験機による照射を行った。屋外暴露は最長で3年間、耐候性試験機による照射は水噴霧を含むサイクルで最長200時間行った。サイクルは、8分間照射のみ行った後に1分間照射と水噴霧を行う1サイクル9分間とした。屋外暴露および耐候性試験機による照射を行った試験片をサンプルとした。

分析方法

・材料試験(引張試験)
材料試験機で引張試験を行った。引張速度を2 mm/minに設定し、室温で試験を行った。各条件の試験片を3本測定し、引張強さの平均値を算出した。
・表面観察
電子顕微鏡によりサンプルの表面を観察した。

分析結果

引張強さに関しては、耐候性試験機で200時間の照射を行っても屋外暴露1年間に相当する強度まで低下しなかった(図3)。電子顕微鏡による表面観察結果に関しては、屋外暴露を行ったサンプルの表面と耐候性試験機による照射を行ったサンプルの表面を比較すると、屋外暴露の場合には生成したクラックの規模が大きかったのに対し、耐候性試験機による照射の場合にはクラックがほとんど見られなかった(図4)。屋外暴露は耐候性試験機による照射に比べてクラック生成が促進されている点が異なると考えられた。

関連装置

コメント

本事例に関連する文献
文献1:尾形正岐・望月陽介・古屋雅章・寺澤章裕・勝又信行・長田和真・阿部治・八代浩二・石黒輝雄・山田博之「耐候性試験機による促進劣化試験と屋外暴露との相関性-ABS成形品の色差について-」成形加工、35(12)、pp.430-432(2023)
文献2:尾形正岐・望月陽介・古屋雅章・寺澤章裕・勝又信行・長田和真・阿部治・八代浩二・石黒輝雄・山田博之「耐候性試験機による促進劣化試験と屋外暴露との相関性-ABS成形品の強度について-」成形加工、36(1)、pp.19-22(2024)

適用可能な材料

ABS成形品

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