種々の化粧品原料の水蒸気吸着について

事例No.

KM-0001

概要

化粧品業界では、マイクロプラスチックの問題が注目され、天然材料への転換が急務となっている。化粧品担体としての微粒子材料や保湿材用の吸水性樹脂などの評価の依頼があった。今回は、原料の表面観察に加え、窒素吸着による細孔の評価および水蒸気吸着による親水性・疎水性の評価を行い、原料としての性能のデータベース化を図った。

お困りごと・要望

化粧品原料の物性評価をお願いしたい。

事例提供機関

熊本県産業技術センター
材料・地域資源室永岡昭二・堀川真希

事例に関するお問い合せ

サンプル

セルロース粒子(5 μm, 300 μm, 2 mm)、ポリメタクリル酸メチル粒子(5 μm)、硫酸多糖類A、竹セルロースナノファイバー(竹CNF)、ヒアルロン酸

分析方法

活性炭やシリカゲル、吸水性樹脂や保湿材の表面特性は、細孔や親水性・疎水性のバランスに大きく依存する。表面構造や特性を評価するには電子顕微鏡を用いた形状観察や分光学的手法による表面状態の情報も必要であるが、ガス吸着測定法の評価が最も有効であると考えられる。本分析では、ガス吸着測定装置を用いて、窒素や水蒸気のガス分子をプローブとした吸着等温線を作成・評価した。窒素吸着では、細孔構造や比表面積を測定した。一方、水蒸気吸着では、親・疎水性を評価した。

分析結果

7種類の化粧品原料の窒素(N2)ガスの吸着法によって作成された吸着・脱着等温線を図1に示した。微粒子系(図1-a)と繊維系(図1-b)に分類して挙動を調査した。微粒子系原料の方がN2吸着量がより大きくなり、比表面積も大きくなることが確認された。これは微粒子の多孔性に起因していることが考えられる。微粒子系原料は吸・脱着挙動がそれぞれ異なっており、細孔の形態が異なることが示唆された。図2に水蒸気の吸着等温線を示した。微粒子系と繊維系原料を比較したところ、繊維系原料の方がより水蒸気を吸着することがわかった。硫酸多糖Aは図1-bに示すように、N2吸着の比表面積が小さいにもかかわらず、面積当たりの水蒸気吸着量が大きいことが確認された。一方、微粒子系では水蒸気吸着量はポリメタクリル酸メチル粒子が最も低くなった。これは疎水基であるメチルエステル基が表面に存在するため、水蒸気が吸着されにくいことによると考えられる。また、セルロース系の粒子においては図1-aに示すように、5 μm粒子は300 μmや2 mmの粒子よりもN2吸着による比表面積が最も大きいにもかかわらず、水蒸気吸着量は最も小さくなった。この原因として、粒子の製造方法が異なることがあげられる。

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