2024年度 公開シンポジウム
日時: 2024年10月10日(木) 14:30 - 17:10開催方式: 対面会議とオンライン会議のハイブリッド開催
会場: 産業技術総合研究所 臨海副都心センター別館 11階 会議室
講演内容の詳細
(1) フェーズフィールド法を基軸としたデータ駆動研究の新展開
講師: 名古屋大学大学院 工学研究科 教授 小山 敏幸 様
概要: 計算熱力学(CALPHAD法)の確立、フェーズフィールド法による材料組織解析の進展、および組織情報を活用した材料特性計算、が過去約40年に渡り同時発展し、次世代材料設計における強力な順問題体系を与えるに至った。一方、データ駆動科学におけるノウハウは、逆問題も含め、順問題体系を縦横に活用する手法の集大成とみることができる。本講演では、当該分野の基礎および応用について解説するとともに、材料組織情報を軸足に、以上を有機的に活用する視点について議論したい。
(2) プロセスインフォマティクスに基づく高機能性材料の研究・開発・評価・製造
講師: 明治大学 理工学部 応用化学科 准教授 金子 弘昌 様
概要: 当研究室では、様々な高機能性材料のデータをコンピュータでデータ解析・機械学習し、その中に隠れている関係性を見つけモデル化し、そのモデルにもとづいて未知の化学構造・材料・製品を評価したり、設計したりしている。さらに、各種装置や化学プラントにおいて高品質の製品を安定的に製造するため、測定が困難なプロセス変数の値をプロセスデータから予測し、管理・制御する技術の開発をしている。本講演ではプロセスインフォマティクスにより高機能性材料の研究・開発・評価・製造を支援する方法を解説し、様々な応用事例について紹介する。
(3) デジタル技術によるクローズドループを用いた材料設計とプロセス開発
講師: 奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学領域 教授 藤井 幹也 様
概要: 本講演では、AIやシミュレーションを活用した材料開発の最新研究を2つ紹介する。第一の研究は、コポリマーのプロセス最適化に関するものであり、フローリアクターを用いたラジカル重合を通じて、様々な合成条件下で得られるポリマーの特性を解析した。この過程で、モノマー転化率や組成比を測定し、機械学習と量子化学計算を用いて高精度な予測モデルを構築している。また、ベイズ最適化を応用して、目的とするポリマー合成の最適化技術についても解説する。第二の研究では、物理的記述子を活用した条件付きGAN (Generative Adversarial Network) を開発し、無機材料の逆設計を行った。この生成モデルを用いて、所望の特性を持つ材料候補を創出し、物理シミュレーションとのクローズドループを形成することで、既存データが少ない領域においても新たな材料の探索に成功している。これらの研究は、材料科学の進展において重要な役割を果たす可能性を持つ。