古藤 日子(ことう あきこ) 

  

写真:左から コトウ、オオアリの1種(Camponotus fellah)、個体識別バーコードを背負ったC. fellah

2010年度 東京大学大学院薬学系研究科遺伝学教室 特任研究員
2011年度〜2012年度 ローザンヌ大学 研究員 (日本学術振興会 海外特別研究員)
2013年度〜2016年度 東京大学大学院薬学系研究科遺伝学教室 助教
2017年度〜現在 産業技術総合研究所 主任研究員(a-koto(at)aist.go.jp)

研究テーマ
「アリの環境依存的な生態恒常性維持機構の解明」
「アリの社会性行動制御と環境適応進化の分子メカニズム解明」

研究内容説明
アリやハチといった社会性昆虫は集団(コロニー)を形成し、様々なカーストを備えた分業体制によって社会生活を営む。社会性昆虫の中でもアリは冷帯や高緯度地域を除く地球上のあらゆる環境下においても生息する、高い環境適応能力を有する生物である。アリの生来もつ社会性行動や環境適応応答は他の生物にも共通する行動や生体恒常性維持を制御するメカニズムの進化・起源を探る上でも非常に興味深い。私は分子生物学的アプローチにより、アリの社会性行動や環境適応応答を制御する分子基盤の解明に挑んでいる。社会性昆虫の大きな特徴は集団内に女王アリ、雄アリに加え、非生殖階層(労働アリ)を備える点にあり、その生態システムは多くの脊椎動物の示す社会性と区別され「真社会性」と定義されている。非生殖カーストの大半を占める労働アリには高度な労働分化が存在し、労働アリは日齢や周囲の個体環境に応じて労働行動を変化させることが知られている。また、このような社会性昆虫が独自に進化させてきた社会性のみならず。他の高次社会性生物にも共通するような社会性行動が観察されている。私はこれまでに労働アリは社会的コミュニケーションが断絶された孤立状態にある労働アリは生存を維持することができず、行動や消化機能の異常により死に至ることからを示した。この結果は労働アリにおいて他個体との相互作用はその行動制御や恒常性の維持に寄与することを意味している。私は個体識別バーコードを用いた行動アッセイシステムを利用し(Mersch et al., 2013)、アリ類において他個体との社会的コミュニケーションが健康維持や生存にどのような生理的意味をもつのか、また我々ヒトを含む他の生物とアリを含む昆虫網において高度に保存された神経ペプチドホルモンに着目し、社会性行動制御や環境適応の分子メカニズムの解明を目指している。

ひとこと
アリは私たちにとって最も身近な昆虫の一つです。これまでにアリのユニークであり、不思議な行動や生態システムが多く記述されていながら、その背景にある制御メカニズムについては今もなお不明な点が多く残されています。これまでの研究キャリアを活かした細胞生物学、遺伝学、神経科学分野と生態行動学分野の融合により、私たちの身の回りの生物が生来もつ、しなやかな生命システムの理解を目指しています。研究テーマに興味をもっていただいた方からのコンタクトもお待ちしております。

関連研究業績

1. LeBoeuf AC., Waridel P., Brent CS., Gonçalves AN., Menin L., Ortiz D., Riba-Grognuz O., Koto A., Soares SG., Privman E., Miska EA., Benton R., Keller L. “Oral transfer of chemical cues growth proteins and hormones in social insects.” eLife, 2016; 5: e20375
2. Koto A, Mersch D., Hollis B., Keller L., “Social isolation causes mortality by disrupting energy homeostasis in ants”, Behavioral Ecology and Sociobiology, 2015; 69: 583-591
3. Yamaguchi Y., Kuranaga E., Nakajima Y., Koto A., Takemoto K., and Miura M., “In vivo monitoring of caspase activation by FRET-based fluorescent probe”, Methods in Enzymology, 544, 299-325, (2014)
4. Koto A. and Miura M., “Who lives and who dies: Role of apoptosis in quashing developmental errors.” Communicative and Integrative Biology, 4, 495-497 (2011)
5. Koto A., Kuranaga E., Miura M., “Apoptosis ensures spacing pattern formation of Drosophila sensory organs.” Current Biology, 21, 278-87 (2011)
6. Kuranaga E., Matsunuma T., Kanuka H., Takemoto K., Koto A., Kimura K., Miura M., “Apoptosis controls the speed of looping morphogenesis in Drosophila male terminalia.” Development, 21, 1493-1499 (2011)
7. Koto A., Kuranaga E., Miura M., “Temporal regulation of Drosophila IAP1 determines caspase functions in sensory organ development.” Journal of Cell Biology, 187, 219-231 (2009)


受賞その他特記事項

1. Best presentation award(第5回Notch研究会、千葉)、古藤日子、2010.
2. 船越 龍・鶴代賞(フナコシ株式会社)、古藤日子、2009.
3. 第4回森脇大五郎賞大賞(第8回日本ショウジョウバエ研究会(JDRC8)、兵 庫)、古藤日子、2007.